麦茶 さま

「敦也くんの受難」

冬休みが明けての3学期。昼飯もそこそこに、俺は屋上に来ていた。
「熱っぽいせいか、この冷たさが気持ちいい〜」
風邪のひきはじめに冷たい風に当たるのもどうかとは思うが、雅之さんに貰った風邪薬も
飲んだことだし、ちょっとなら問題ないだろう。
「やっぱ、コタツで寝ちゃったのがマズイよな」
俺は昨晩のことを思い出して、顔を赤らめた。珍しく仕事が早く片づいたと、早めに帰宅
した雅之さんにあっという間に押し倒されて、ベッドに行く間もなくそのままコタツで朝
を迎えてしまったのだ。
「悪化したら、雅之さんのせいだからな」
一人ごちる俺の頬を風が撫でてゆく。
「ん〜……あれ?……」
なんか突然、背筋がぞわぞわ〜っとなったぞ。ね、熱が上がったのかな。おでこに手を当
てる。特に熱はないようだが、いつまでも吹きっさらしの所にいるのもよくない。校舎内
に戻ることにしよう。足を踏み出したが、なんか妙に歩きづらい。ふと下半身に目をやった。
「わっ、わわっ…なんで!?」
そこはすっかり大きくなって、テントを張っていたのだった。俺は思わずそこを手で押さ
え、辺りを見回す。他に誰かがいるはずもなく、ひとまず安心した。
「どうしよう。このままじゃ教室に戻れないし…」
そこは俺の意志とは無関係に堅く張りつめており、上から押さえている手の熱にも反応す
る始末。俺は覚悟を決めて、屋上入り口の反対側へとまわった。

「ん…んん〜っ…………今何時だ?」
屋上への出入り口である階段塔の屋根の上、給水タンクの横で、明日馬は昼寝から目覚めた。
「そろそろ昼…頃かな。敦也さんとこ行ってメシ食うか」
ぐぐ〜っと伸びをして、階段塔から飛び降りようと下に目をやる。
「あ、あれ?敦也さんだ」
明日馬は敦也に声をかけようとしたが、なんだか様子がおかしい。他には誰もいないのに、
なんだかこそこそしている。
『どうしたんだろう…』
明日馬の疑問をよそに、敦也は階段塔の壁により掛かると、おもむろにズボンのベルトを緩めた。
『えっ…えぇっ!?敦也さん、何して…』
敦也は左右を見回すと、トランクスごとズボンを降ろして自分を慰め始める。やがて聞こ
え始める甘い吐息。
『こんな所で……けっこう大胆…』
頭上から明日馬に見られているとは思わない敦也は、先端から溢れる透明な液を塗り拡げ、
手のひらで捏ねるようにそこを刺激していた。あいた左手はシャツをたくし上げ、胸の突
起をつまみ上げる。
『はぁはぁ…胸も感じるんスね……あぁ、もうっ…』
たまらず、明日馬は高ぶりを引っ張り出した。
『敦也さん……あぁっ、敦也さん…』
目の端に敦也の姿を捉えながら、明日馬は握った手を上下に動かす。
『くふっ…感じる……あっ、そんな激しく…』
眼下で敦也がジャマだとばかりに脚に絡まったズボンとトランクスを脱ぎ捨て、胸をいじ
っていた指を口に含む。大きく脚を拡げると、十分に唾液を絡めた指を最奥にある蕾にゆ
っくり埋めていった。
『敦也さん…もう…いきそうっス…』
明日馬は立ち上がり、頂点へ向けていっそう手の動きを早めた。
「んんっ…き、きて…っ…」
「敦也さんっ…」

昼休み。いつものように敦也くんのところへ行こうとしたら、女の子に呼び止められた。
用件は聞かなくても、だいたい分かってるんだけどね。当たり障りのないところで、屋上
へとやって来たわけだ。
「御園くん…」
その子は胸の辺りに手を組んで、上目遣いにちらちらと僕の方を見ている。今時、珍しい
感じの娘だ。
「それで…」
「あの、御園くんっ。これ、読んでください」
どこから取り出したのか、差し出された両手にはやたら分厚い手紙が握られている。
「ありがとう。でも…」
「わかっています。御園くんは倉橋くんのことが好きなんですよね」
「うん。だから…」
「そんな御園くんを見ていたら、私、居ても立ってもいられなくなって、思いの丈をこう
して詩にしてみたんですっ」
そういって、ぐぐっと僕の手に手紙のような詩集のような物を押しつけてきた。
「あ、いや、だから…」
「私のことを好きになってくれとは言いません。あ、でも、どこかで少しでも想ってくれ
たら…きゃっ」
「ね、ねぇ…」
「もう、私ったら何を言ってるのかしら」
「僕の話も…」
「それじゃ、応援してますっ」
そう言い残して、彼女は屋上から階段を駆け下りていった。いったい何だったんだ。この
押し付けられたモノも一体どうしたものか。一気に疲労が押し寄せてきた感じだ。
「ここは一つ、敦也くんに癒してもらおう」
僕は階段塔へ近づいていった。
「…っ…ふっ……んぁぁっ…」
なにやら聞こえてくる、押し殺したようなくぐもった怪しい声。その声は階段塔の後ろか
ら聞こえてくるらしい。僕はそっと覗いてみた。
「ふぁぁっ……あ…もっとぉ…」
『あ、ああああ、敦也くん!?』
大声を出しそうになったところを、何とか押さえ込む。
『こんな所で……敦也くん、そんなに我慢できなかったんだ。一言僕に言ってくれれば』
「んんっ…き、きて…っ…」
そのセリフに、僕は敦也くんの前に飛び出していた。
「敦也くんっ!」
「敦也さんっ…」
「雅之さん…っ…」

「見られちゃったよー」
ぱたたっと軽い音を立てて、コンクリートの床に白い液がこぼれ落ちる。噴出に合わせて、
後ろの蕾はひくひくと咥えたままの指を締め付ける。射精後の陶酔感に身を任せ……よう
と思ったら、目の端に人影が飛び込んできた。
『誰だ?』
次の瞬間、今の自分の姿を思い出す。
「わっ、わ〜っ!」
慌ててシャツを引っ張り降ろし、その人影を見上げた。
「み、御園…」
その影は御園だった。が、なぜか硬直している。
『俺のこんな姿を見て固まってる…?いや、こいつに限ってそんなはずはない』
微妙に震えているようだ。
『怒って…る?……はっ、イクときに雅之さんの名前を呼んだからかも…。でも、俺は別
に御園と付き合ってるワケじゃなく、こいつが勝手にベタベタしてくるだけで、なにも俺
が怒られる筋合いなんてないぞっ!』
「御園…?」
御園の手が、ゆっくりと自分の頬に伸びる。その頬には、なにやらべっとりと白っぽい粘
液が貼りついていた。
『えっ?えっ?まさか俺のが?そんなバカな』
いくら性春まっさかり〜な高校生の俺だって、あんな遠くまでは飛ぶはずがない。第一、
足元に染みをつくっているじゃないか。それじゃ一体誰の…?
御園は青筋を立てながら、長い指先で頬のそれを拭う。指をすりあわせ開くと、親指と人
差し指の間でねと〜っと糸を引き、切れた。
「……くくっ………くくくっ……」
下を向いたまま、肩を振るわせて笑う御園。下から眺めている俺としては、その引きつっ
た表情が丸見えで、めちゃくちゃ怖いんですが…。
「あー、もしかして引っかけちゃったっスか?」
突然、頭上から声がした。
「あ、明日馬ぁっ!?」
自分でも情けないくらいひっくり返った声を出していた。振り返って上を見上げると、階
段塔の上に仁王立ちになっている明日馬がいた。
「くくっ……僕にこんなコトをしたのはキミか…」
怒りのオーラが御園の身体から立ち上る。
「あー?そんなトコに出てくるヤツが悪いんだよ。さてはお前、敦也さんによからぬコト
をしようと思ってたんだろ」
よからぬコトをしていたのはお前だろ〜っとツッコミたいが、二人の様子はまさに龍と虎
って掛け軸の構図だ。明日馬の下が丸裸ってのが笑いを誘う…って、よく考えたら俺もじ
ゃん。ふと、頭の中で今の状況に至るまで様子が走馬燈のようにリプレイされる。
もしかして…もしかして…もしかしなくてもっ!
「う…ううっ…うわぁ〜っ!!」
突然叫びだした俺に唖然とする二人を横目に、慌ててズボンを履くと、授業もカバンも放
りだして、俺は雅之さんのマンションまで脇目もふらずに走っていた。

「敦也っ、大丈夫か」
「雅之さんっ」
俺はそのまま雅之さんの胸に飛び込む。
「よしよし」
雅之さんが子供をあやすみたいに頭を撫でてきた。って、ちょっと待て。こんな時間にな
んで雅之さんが部屋に居るんだ?
「ちょっと、雅之さん!仕事は?」
「あ、あぁ…敦也の状態が心配でなぁ。その…ちょっと抜け出してきたんだ…」
なんか歯切れが悪い。それに、心配だとしても、この時間に俺が帰ってくる確率なんてゼ
ロに近いハズだ。あんなコトがなければ…。
「それにしても、なんでこの時間に?」
「う〜…薬、飲んだんだろ?」
「カゼ薬?飲んだけど」
「だから、この時間に抜け出して来てみたというわけだ」
その『だから』がどこに繋がってるのか、さっぱり分からないんですけど。
「ねぇ、雅之さん。何か俺に隠してない?」
「なっ、ないないっ。なんにもない」
さらに挙動不審な雅之さんを、上目遣いでじっと見つめる。
「……………………」
「…………あ〜、その、なんだな。実は渡す薬をちょこっと間違えた…と」
「間違えたぁ〜っ!?」
ずいっと顔を寄せると、雅之さんは両手を挙げて後ずさった。
「いや、その、先日仕事中に『もっと敦也の乱れてる姿が見たい』って呟いたのを相原に
聞かれてな。それでもらった薬なんだ」
「へぇぇぇっ、相原さんにもらったんだ…。まさかとは思うけど、その薬って…」
「そう、媚薬ってヤツ」
あっけらかんと言う雅之さんに、全身の力が抜けた。
「あぁ、熱が…」
風邪の引きはじめにまともな薬も飲まず、吹きっさらしの場所であられもない格好をして
いたんだ。熱が上がるのも当然というわけで。
「それはいけない。まだ薬が切れていないんだな」
いそいそと服を脱がしにかかる雅之さんの顔面に、俺の拳がヒットしたのは言うまでもない。

おまけ
敦也が走り去ったあとの屋上では…
「敦也くんのトランクスは僕が届ける」
「俺が敦也さんに届けるんだ。お前は引っ込んでろ」
「そんなこと言って、おかずにする気だろ。あぁ、こんな変態に絡まれて、敦也くんが可哀相だ」
「なんだとっ!絶対倒すっ!!」
二人の死闘はいつ果てるともなかった…。


麦茶さんに頂きました〜〜v
なんかみんな発情しまくって春のイヌ畜生のようで微笑ましいデス〜vv
敦也がモテモテで可愛いので、きゅーんっとしてしまいましたっ(笑)
でもでも、つばきゅんが顔射!ひえー。明日馬、可愛い顔してそんな大それたことをっ。
一番役得は、雅之さんですねー。
友情パワーでオエビで申し訳ないですすが、挿絵を書きましたーヽ(^o^)丿ヤーっ