「ね、ルキエル先生クリスマスってなに?」
先ほどから熱心に下界の書物を読んでいた琥珀が、本から顔を上げて尋ねる。
「クリスマスか…」
天界は一年中雪も降らずサンタもいない。
琥珀が知らないのも不思議ではない。
「下界のお祭りだよ」
「ふぅん…」
琥珀の読んでいた本の挿絵には、色とりどりの電球やろうそくの明かり…
もみの木など見るからに楽しそうな風景が描かれている。
「そうだ。待ってろ…」
俺は自室に戻ると、奥深くにしまっておいて、忘れていたモノを探し出し
リビングにいる琥珀の手に渡した。
「下界の子供たちは、クリスマスイブの夜にプレゼントを受け取るんだ」
琥珀に渡したもの…。
それは…以前、下界に降りた時にどこかの店で配っていた小さなサンタのぬいぐるみだった。
「オレ、こんなのいらないっ」
「そうか…」
奥にしまっておいたので、くたびれているし、それに今はクリスマスイブでもない。
「仕方ないな…」
そうしたやり取りも忘れていた、次の日。
「琥珀、どこだぁ?」
また外に遊びに行ってしまったんだろうか…。
玄関のドアを開けて外を見渡す。
「あ…」
庭に生えた一番大きな木の枝…
「やっぱり嬉しかったんじゃん」
昨日のちょっぴりくたびれた、サンタのぬいぐるみが、
ちょこんと枝に吊るされて風に揺れていた。 |